文章修行家さんに40の短文描写お題

文章修行家さんに40の短文描写お題

 01. 告白
 02. 
 03. 卒業
 04. 
 05. 学ぶ
 06. 電車
 07. ペット
 08. 
 09. おとな
 10. 食事
 11. 
 12. 
 13. 女と女
 14. 手紙
 15. 信仰
 16. 遊び
 17. 初体験
 18. 仕事
 19. 化粧
 20. 怒り
 21. 神秘
 22. 
 23. 彼と彼女
 24. 悲しみ
 25. 
 26. 
 27. 芝居
 28. 
 29. 感謝
 30. イベント
 31. やわらかさ
 32. 痛み
 33. 好き
 34. 今昔(いまむかし)
 35. 渇き
 36. 浪漫
 37. 季節
 38. 別れ
 39. 
 40. 贈り物

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 01. 告白  【65文字】

 辛抱強く私の言葉を待っている視線から逃れて俯く。口の中が乾いて声が出ない。テレパシストになりたいなとか、場違いなことを考えている。(07.03.29)

 02.   【65文字】

「騙されたと思って外見なよ。俺、いるから」
 受話器を持ったまま半信半疑で窓をあけると、いつの間に咲いたのか、桜の花が夜空に白かった。(07.04.01)

 03. 卒業  【65文字】

 ずっと叔母さんとこにいさせて? 泣き出しそうな目で繰り返していた姪が今日、自分でドアを開けて出て行った。葉桜の中、笑顔で手を振って。(08.04.15)

 04.   【62文字】

 車窓を流れる見知らぬ風景が、迷子になった子どもの日の不安を呼び起こす。自ら望んで未知の土地ばかりを歩くようになった、今でも。(07.12.31)

 05. 学ぶ  【65文字】

 氷上に十何回目かの派手な尻餅をついて、少女は、先生の言ってる事がわかった、と呟いた。そして次のジャンプに向かって力強く滑り出した。(09.12.10)

 06. 電車  【65文字】

 通勤準急を一本見送り、いつもの各停の定位置に腰をおろして息をつく。課長でも父でもない私だけの35分の為なら、早起きなど安いものだ。(07.04.09)

 07. ペット  【64文字】

 どこでも一緒に連れてってくれて可愛いって言ってくれて今も髪を撫でてくれていても、寂しい。彼の携帯電話の向こうの男友達になりたい。(08.02.12)

 08.   【62文字】

 知らない、と君は薬指と小指で頬を掻きながら言う。ああ、また。その仕草はいつも、君の真意が言葉と裏腹なことを雄弁に告げている。(09.09.22)

 09. おとな  【65文字】

 酒飲んでも煙草吸っても免許取っても童貞捨てても就職内定しても実感がない。
 ハタチになって成人式やったら自動的になれると思ってたのに。(07.10.15)

 10. 食事  【65文字】

 餃子。枝豆。オクラ納豆の巻き寿司。ビール。いも羊羹。
 一人で侘びしいなんて思わない。好きな物を好きなだけ食べられて誰にも怒られない。(07.07.23)

 11.   【65文字】

 皆そう言ってるよ、と威張る弟に、皆って誰よ、と問うと、三島とか寺山とか美輪明宏とか、と平然と言う。
 今度は何の本にかぶれたんだろう。(07.04.06)

 12.   【62文字】

 その人が歌うと微かに花の匂いがする。遠い波の音がきこえる。雲に覆われた満月の光が届く。
 私たちは今朝方までの悪夢を一時忘れる。(07.12.27)

 13. 女と女  【65文字】

 人違いかと思った。鮮やかなメイクに個性的な服、何よりあんな風に大口をあけて笑う彼女を、初めて見た。
 隣にいる女友達に、少し嫉妬した。(07.03.23)

 14. 手紙  【64文字】

 曳出しを片付けていたら、変色したルーズリーフの切れ端が出てきた。
「ずっと友達でいようね」
 懐かしい字。でも、誰のだか思い出せない。(07.04.03)

 15. 信仰  【63文字】

 今すぐ跪いてしまいたい。あたし、あの声のためなら何だってする。
 ドームの遠いステージで彼が歌い出した途端、膝が震えて涙が溢れた。(07.04.05)

 16. 遊び  【65文字】

 ずるい、ルール違反だよ!
 ……どうしてあんな事言っちゃったんだろう。あそこでムキにならなければ、あの子ともう少し遊んでいられたのに。(07.07.28)

 17. 初体験  【65文字】

 滅多に乗らない地下鉄を耳慣れない名前の駅で下りる。見知らぬ場所に一人で行くときはいつも、初めておつかいをする子どもの気持ちになる。(07.09.11)

 18. 仕事  【65文字】

 厭な顔しないで何でも引き受けて、偉いね、とそっと耳打ちしたら、仕事ですから、ときれいに微笑まれた。
 その笑顔も仕事の内なんだろうか。(07.06.05)

 19. 化粧  【64文字】

 ショウウィンドウに映る自分が、し慣れない化粧のせいで知らない女のように見えて、ぎょっとする。
 彼といると私はどんどん私でなくなる。(07.06.06)

 20. 怒り  【65文字】

 殺気立った民衆から石とともに神をも畏れぬ罵声が飛ぶ。囚われた青年の瞳に不穏な光が閃いた刹那、雷鳴が轟いた。人々は俄に立ち竦んだ。(09.09.30)

 21. 神秘  【65文字】

 月が満ちるごと分裂を繰り返し、魚からとかげ、鳥から獣へ五十億年のトンネルをくぐり、堆積する輪廻の記憶を一時手放して、生まれ落ちる。(09.10.30)

 22.   【65文字】

 予感は私にもあったのだ。同じことを皆が感じていたから、あんな突拍子もない話がまことしやかに流れたのだろう。
 まさか本当だったなんて。(07.08.29)

 23. 彼と彼女  【64文字】

 時折顔を見合わせて、困ったように笑いあうのが初々しい。雛人形のような花嫁と花婿の周りは、大輪の花が咲いたようにぽっかりと明るい。(07.03.28)

 24. 悲しみ  【65文字】

 物語の中のエルフならよかった。間違いなく今、この場で死ねた。
 私が人間で、こんなに悲しいのに平気で生きていられることが何より悲しい。(07.04.26)

 25.   【60文字】

 半透明な体全体で、チカッ!とその小さな生きものはフラッシュする。太陽の届かない深海の闇の底では、生命がそのまま光になる。(08.01.08)

 26.   【65文字】

 お見舞の帰りによく寄った店の定食を時々思い出す。もう二度と食べられない気がする。彼女が去った今、あの町に行くこともきっともうない。(09.01.31)

 27. 芝居  【65文字】

 唇がふれるギリギリに顔を寄せた瞬間に暗転、途端に彼は体を離して下手にはける。止まない客席の大歓声を聞きながら、僕は現実に戻れない。(09.12.29)

 28.    【64文字】

 黙ってただ肩におかれた掌があたたかい。平熱が高いのだ。微かに甘い香りがする。
 今度彼女がへこんでいたら私が同じ事をしよう、と思う。(07.07.12)

 29. 感謝   【65文字】

 登下校のたび校舎に一礼するのが煩わしかった。それも今日が最後だと思うと妙に切なくて、思いきり深くお辞儀をした。
 お世話になりました。(07.03.27)

 30. イベント  【65文字】

 喧しい音楽とはしゃぎ声、甘いのや辛いのが入りまじった匂いに取り巻かれて立ちすくむ。入場券を買ったのに、踊りの輪には入っていけない。(08.10.31 )

 31. やわらかさ  【63文字】

 枕元の水薬をさぐった手に、ふにゃりと猫がふれた。そっと撫でると、ひくく喉をならして少し体をのばし、すぐにまた丸まった。暖かい。(07.03.22)

 32. 痛み  【63文字】

 そのさりげない一言に、心臓から鳩尾にかけてをぎゅっと掴まれる。どこから血が流れているんだろう? 私はただ、痛い、と思うばかりだ。(07.07.31)

 33. 好き  【64文字】

 あんまりヘコんでるから、「いいじゃないですか私先輩のそのばかなところも大好きですよ」ってついつるっと言ってしまった。ばかは私だ。(07.03.30)

 34. 今昔(いまむかし)
  【65文字】

 昔はレコードに針を落とす手が震えたと呟くと、DLした新曲を初めて聴く時は今もアガりますよ、とiPod nanoを手に後輩が笑った。(09.11.02)

 35. 渇き  【63文字】

 ひと口頂戴、と僕の手から奪ったソーダを飲む彼女の、日焼けした喉元が眩しい。瓶を奪い返して飲み干しても、僕の渇きはおさまらない。(07.04.30)

 36. 浪漫  【64文字】

 どこまでゆくのですかと問うと、遠くまで、と彼は低い声で呟いた。太陽に真っ直ぐ顔を上げて、裸足で歩いていく。もうすぐだ、と信じて。(07.04.25)

 37. 季節  【63文字】

 空の青が濃くなった。校庭も、花のきいろやももいろはいつのまにか減って、緑ばかりになっている。
 新学年にも新学級にもまだ慣れない。(07.04.18)

 38. 別れ  【63文字】

 手を振って、お互い逆の方向に歩きだしてから真顔で俯く。きっともう会わない人だろうなあと思って、今更言えなかった言葉を思い出す。(07.04.12)

 39.   【64文字】

 2階D47って、ほんとにFC優先チケットかこれ? ひとしきり落胆して、ふと思う。
 この前まで会場に入れるだけで舞い上がってたのにな。(07.03.26)

 40. 贈り物  【64文字】

 角をとって。線をきっちりつけて。
 教わったとおりに包装紙を折る。あの人は本当にギフトラッピングが上手だった。才能と言っていい位に。(07.03.24)

07年から09年にかけてメモ帳でトライしていたお題をまとめました。たかだか65文字×40本に3年もかかるって怠惰にも程がありますが、何とか終わらせられて良かったです。
「情景描写」することを最優先したつもりですが、難しかった! こんな短文ですら私はそのときの気分や状況を反映させずには書けず、自分で読み返すとほとんど日記状態のものもあって苦笑してしまいます。出来が悪いものは直そうかと思っていましたが、キリがないので全てそのまま載せました。 /2010.02.13.